東大阪市、八戸ノ里にオープンして1年あまりの匠屋さんにおじゃましました。
ここのたこ焼きが取り上げられるようになったのは、伊勢海老のたこ焼きが話題を呼んだからです。活けの伊勢海老なんて、金持ちでも特別なときにしか食べないような、たいそうな食材ですが、それを使うとは、えらい思い切った発想、その張本人を確かめにきたようなもんです。
よほどイチビリな大阪のオバチャンかと思いきや、店長の呑田順子さんは、声も言葉も抑え目の堅実派。なんとも肩すかしな感じではありますが、でもやってることは、たこ焼きというアイテムにとって、かなりのイチビリではないでしょうか。
伊勢海老を丸ごと蒸します。火が通ったら、身を切り分けます。たこ焼き10個分の身がとれるそうです。ミソもとりだし、切り分けられた身に添えられます。この時点で、そのまま食べさせてもらいたいとこですが、今から1個700円という、破格のたこ焼きが焼かれるのす。
私は2個頼んだので、2個だけ焼くとのこと。でも生地は4個分、どうやら、伊勢海老をのせたあとに、生地をかぶせるみたいです。隣りの鍋では、ふつうのたこ焼きも焼かれてはいますが、大きさがちがうんですね。さすが700円だけのことはある? のかなあ・・・
大きなまん丸は、金箔をトッピング、寿のお箸が付いてます。しかも山芋の千切りも箸休めに、まさに特別の日の晴れのたこ焼きなのでした。
呑田さんにお話をうかがいましょう。子供たちも成人し、新たなチャレンジとしてたこ焼き屋さんを選んだということです。学生の頃、学校近くのたこ焼き屋さんへ立ち寄っていたこともあり、たこ焼き屋さんって、なんかいいなあ・・と思っていたそうです。
その思いを旦那さん、二人の息子さんが、後押ししてくれたそうです。表のたこ焼きの御紋は息子さんのデザイン、今日も、焼くのをお手伝いしてます。
だしはけずりぶし、昆布で別々にとって、あとで合わせるとのこと。言葉数の少ない呑田さんですが、それだけに「こだわりの部分は譲られへんよ・・・」という意気込みを感じます。
普通のたこ焼きもいただきましょう。これは6個250円、とってもリーズナブル。先に伊勢海老を食べちゃうと、単に奇をてらったたこ焼き屋のように勘違いしてしまいますが、プレーンを食べてみれば、一目瞭然。
ベテラン主婦から一転、たこ焼き職人をめざす呑田さんの強い意志が味に反映されてるのが、嬉しかったです。伊勢海老たこ焼きはあくまで特別商品、匠屋の主役はこの普通のたこ焼きだったのです! そこんとこを間違えんと、地元のお客さんたちも匠屋を応援している・・・それでこそ、たこ焼きを育んだ大阪人といえるでしょう。